ボルドーに約6,600の生産者がひしめく中、日本人初の女性醸造家として活躍する百合草梨紗氏が手掛けるワイン『G by Yurigusa Rouge』。メルロー主体のブレンドが織りなすまろやかな口当たりと豊かな果実味が、ボルドーの魅力を再発見させてくれる。その背景にある彼女のストーリーも必見だ。
ジー バイ ユリグサ ルージュ カスティヨン コート ド ボルドー
G by Yurigusa Rouge Castillon Cotes de Bordeaux
- ヴィンテージ:2022
- 生産者:リサ ユリグサ
- 生産国:フランス>ボルドー>カスティヨン コート ド ボルドー
- タイプ:赤(豊満なまろやか系)
- 品種:メルロー50%、マルベック45%、カベルネ フラン5%
- 購入店:セラー専科
- 購入日:2024/08/27
- 購入価格:10本で19800円のセット
- 参考価格:2838円
- 購入セット:田邉公一氏厳選!鬼コスパワイン9本セット+スペシャル特典 第6弾
ジー バイ ユリグサ ルージュ [2022]カスティヨン コート ド ボルドー
ストーリー
田邉鬼コスパセットに同梱されていたボルドールージュ。
渋くて酸っぱくて果実味もなくて。カベルネ・ソーヴィニヨン主体の千円台前半の安ボルドーの赤はそういうとっつきにくいタイプが多い気がしていて。
ボルドーの赤に対して、美味しいと思った記憶がい今までなくて、なんとなく避けていた。
でも、今回のワインは定価3000円ちかい高級ボルドー(庶民にとって)だからね。ああと、カベルネではなくて、メルロー主体。
ワインの聖地ボルドーに約6,600ある生産者の中で日本人初のボルドー女性醸造家『百合草梨紗(ゆりぐさ りさ) 氏』が手掛けるセカンドレンジ
3.3ヘクタールの作付面積で平均樹齢30年のブドウから年間約20,000本のみ生産。熟成は1年か2年使用のフレンチオークで8ヶ月。
色調は輝くルビー色。香りは熟したダークチェリー、カシスの赤いフルーツのブーケにパンを焼いたような樽香。ブドウを食べているような、ふくよかで心地よいアタックに、まろやかなタンニンが口中に心地よく果実味と共に広がっていく。酸とのバランスが良く余韻は長い。早いうちから華やかなアロマがあり、親しみをどこかで感じるような、それでいて、骨格もしっかりしていて上質な格付けボルドーを思わせる気品も感じられる。
紹介文が熱量あって、背景情報をもっと知りたい・飲みたいっていう気持ちにさせられる。
Yurigusa Risa(百合草 梨紗)とはどんな生産者なのか
百合草梨紗さんは、日本人初の女性ボルドーワイン醸造家として有名な人物だ。彼女はフランス人の夫と一緒に「シャトー・ジンコ」を設立し、2016年に最初のトップキュヴェ「シャトー・ジンコ」をリリースした。このワインの名前は、ゲーテの詩に出てくる「ジンコ(イチョウ)」が由来で、イチョウの葉の形から男女の愛や友情を象徴しているそうだ。さらに、ぶどう畑を購入したときに植えたイチョウの木は、次女の誕生ともつながるシンボルになっているらしい。
百合草さんは21歳でボルドーに留学し、年間200以上の格付けシャトーを訪問するほどのワイン熱を持っていた。その後、ボルドーの専門学校で栽培や醸造、テイスティングを学び、卒業後はワイン関連のコンクール審査員も務めた。2006年には夫と共にワインネゴシアンを立ち上げ、高級ワインの取引で成功を収めた。
2015年にはサンテミリオンから数キロのところにあるサンフィリップデグイ村に1.65ヘクタールのぶどう畑を購入。この畑は、シャトー・ペトリュスの元醸造家ジャン=クロード・ベルエ氏がメルローの栽培に最適だと推薦した土地だ。現在、「シャトー・ジンコ」やセカンドラインの「ジー バイ ユリグサ」などを生産し、2019年ヴィンテージからはオーガニック認証も取得している。生産量は少ないが、一つ一つ丁寧に造られたワインは高く評価されている。
「今、私はシンプルに、ボルドー1、世界一の美味しいワインを造るワインメーカーを目指しています。」
詳しくは公式サイトで。日本人醸造化ということもあって、日本語の情報が豊富で助かる。
百合草さん監修のワインたち
自社畑のブドウで作るファーストワイン「シャトー・ジンコ」のほかに、今回飲むセカンドワインなど、百合草さん監修のもと作るワインがある。
セカンドワインがおいしかったら、これらのワインも試してみたくなる。ストーリーのあるワインは、横展開して楽しみたくなる。
シャトー・ジンコ
- 産地:ボルドー>カスティヨン コート ド ボルドー
- 品種:メルロー100%
- 熟成:新樽で18か月熟成
- 価格:\13000
生産量は僅か3,600本(2018ヴィンテージ)という希少なワインで、栽培から醸造まで手間暇をかけて丁寧に造られた至高の1本。
ブドウの旨味が濃縮されており、その旨味を土壌由来のミネラルときれいな酸が包み込んでバランスよく口に広がります。
化学肥料、農薬、除草剤等は一切使用しない有機農法。
ジー・バイ・ユリグサ ルージュ
- 産地:ボルドー>カスティヨン・コート・ド・ボルドー
- 品種:メルロー、マルベック
- 価格:\3000
所有する自社畑のすぐ近くにあるワイナリーと提携し、私、YURIGUSAの完全監修によって造られるバリューワイン。熟成は1年か2年使用のフレンチオーク樽で約半年間。早いうちから華やかなアロマがあり、 骨格もしっかりしていて上質な格付けボルドーを 思わせる気品も感じられます。
ジー・バイ・ユリグサ ブラン
- 産地:ボルドー>グラーヴ
- 品種:ソーヴィニヨン・ブラン、セミヨン
- 価格:\3000
ボルドー白ワインの銘醸地グラーヴにあるワイナリー と提携し、私、YURIGUSAの完全監修によって造られる バリューワイン。熟成は2年使用のフレンチオーク樽 で約半年間。ふくよかな柑橘系のフルーツとマンゴーやはちみつのような甘い香り。口に含むと、 新鮮で濃厚なボリューム感を感じます。
エンソー・ユリグサ ブリュット ナチュール
- AOP:クレマン・ド・ボルドー
- 品種:ソーヴィニヨン・ブラン
- 製法:メトード・トラディショネル
- 熟成:澱と共に 18か月間
- ドサージュ:なし(ブリュット・ナチュレ)
- 価格:\3500
私、YURIGUSAの完全監修のスパークリングワイン。 シャンパーニュと同じ瓶内二次発酵で仕上げられるクレマン・ド・ボルドーです。トップキュヴェのシャトー・ジンコと同じオーガニック認証「AB」を取得しており、「自然と共生する」という共通の哲学を持って造られます。エンソー(円相)とは、禅における書画のひとつで、エチケットにあるように円形を一筆で描いたもの。心の本来の姿、悟り、真理、無限、宇宙などを円形 で象徴的に表現しており、禅宗では最高の悟りを表す究極の形とされています。クレマンの泡も円形であることから、禅の円相にインスピレーションを受け、名付けました。
緻密で繊細な味わいが、和食との相性ともぴったり。 極めてドライでありながら、アカシアの蜂蜜やオレンジを思わせる豊かな果実味もあります。
ユリグサ・ペットナット
- 製法:メトッド・オンセストラル
- 品種:セミヨン
- 価格:\8000
野生酵母により発酵が始まるのを待ち、発酵が完全に終わる前に、糖分が残っている状態で、王冠で瓶詰めし、葡萄の糖分のみで発酵させるため、葡萄本来の豊かな香りと味わいが楽しめます。青りんごのようなフレッシュで、香り高く、身体になじむ感を是非感じていただければ嬉しいです。
カスティヨン コート ド ボルドーとは
最後に、今回飲むユリグサ ルージュの生産地域、カスティヨン コート ド ボルドーについて。
コート・ド・カスティヨンはドルドーニュ川の右岸、ポムロールやサン・テミリオンの東側に位置する。
赤ワインの生産が認められており、メルローを主体にカベルネ・フランやカベルネ・ソーヴィニヨンをブレンドしたフルボディタイプのワインが造られている。
なだらかな丘と谷が続く、温暖な気候に恵まれた地域。土壌は粘土質に砂利や石灰岩が混ざっており、凝縮した葡萄が育つのが特徴。やや若飲みタイプのしっかりとした味わいのワインが多く産出されている。
味わいマップ
豊満なまろやか系
軽快 | 芳醇 | 力強い | 重厚&渋み | |
---|---|---|---|---|
フルーティ&甘み | ||||
フルーティー | 🍷🍷🍷 | |||
ややフルーティー | ||||
ドライ |
感想
商品紹介文に熱量がある。ストーリー性があったり、インポーターが熱量高く押しているワインって、飲みたいって思わせてくれる。
仮にAとBのワインがあって、香り・味わいがまったく同じだったとして。Aはストーリー性があって背景情報も楽しめて、Bは大量仕入れ大量販売の量産型ワインで商品紹介もコピペのような定型文だったら、どっちを飲みたいかという話。品質同じでも、Aのほうがおいしく感じるし、寄りエンターテインメント性含めて情報空間を楽しめる。
ワインは物語。映画と同じように、解釈の余地のある、情報量の多いほうが、消費コンテンツとして優れている。
さて、3000円ボルドーとはなにか、、安ボルドーとはなにが違うのかをつかむべく、集中して味わう。
気合を入れて大振りのグラス、木村硝子 ツル 24ozに注ぐ。高さ278mm、容量720ccとかなり大型サイズのグラスだ。
ふだんは背が低く400cc程度の取り回しの良いソプラノシリーズを使っているが、高給ワインを飲むときは大振りグラス。
香りがふわあっと広がってくる。マルベックがブレンドされているからかな。赤ベリー系の優しいフルーツ香。だからダークチェリーなのか。
そして、寄り添うような上品樽香。塩気もあるパン…プレッツェルみたい。
スワリングしたり、グラスを傾けるうちに、樽香が前面に出てくる。焼いたプレッツェル香、香ばしい香り。
口に含むと、ボリュームのある果実味が爆発する。フルーツ丸かじりしているよう。ジューシー。
果実味たっぷりであまやか。かじつだけだとだらしなくなりそうだけど、適度に酸があって引き締まっている。
力強いけれどタンニンはまろやか。しっとりした舌ざわり。ぴりぴりする辛口で、骨格がしっかりしたワイン。
飲みこむと渋み・えぶみが残る。けれども、渋みだけではなくて、ぴりぴりしたスパイシーな辛口、程よい塩味、ほんのりチョコのニュアンスなど多彩な風味が包み込む。余韻が長くて複雑。
これが安赤との違いかな。安い赤はしぶくてきゃぴきゃぴしたとがった酸味だけ後味に残るパターンが多いが、3000円ボルドーにもなると、果実味と酸のバランスに優れ、余韻の香味が多彩で豊かになる。
すごいな。これが3000円ボルドーか。めちゃくちゃおいしいじゃないか。
ボルドーワインっておいしいんだな。これは発見だ。
香りのボリューム、熟した上品な果実味、そして多彩な要素が重なるグラデーション。たかいワインはグラデーションが楽しめる。いわゆる複雑性。
大き目のボルドーグラスを使っているから、グラスを傾けた時、口に入る液体量が多くなる。鼻がすっぽりグラスに収まっている。だから、香りがぐわっと迫ってきて、多めの液体が一気に流れ込んで果実味が爆発する。
あと、酔い方が上質。同じアルコールでも、頭痛がする酔い方、はやく回っていつのまにか寝てしまう酔い方、程よく気分が高揚して感受性が研ぎ澄まされる酔い方、などといろいろな酔い方がある。いったいなんの違いなんだろうね。このワインは上質な酔いだった。
ペアリング
初日はボロネーゼ。ボロネーゼは自分で作ったほうがおいしいけれど、時間も食材費もけっこうかかるので、手軽で安いレトルト11択。
二日目はマッサマンカレー。ココナッツで煮込んだ甘めの味。これが思いのほかマリアージュが決まる。
緊張と弛緩のセオリー。ワインを飲み、しぶみとぴりぴりしたスパイス感で緊張状態になったところを、ココナッツのふわりとした甘味がそれらを包み込み、果実味をぐっと引き立てる。甘めのカレーだからこそペアリング成立。
評価
A (Amazing)
- S (Sublime): 極上で感動的
- A (Amazing): 驚くほど素晴らしい
- B (Better): 期待を少し上回る良ワイン
- C (Consistent): 定価相応でニュートラル
- D (Disappointing): コストパフォーマンスが悪く期待外れ
- E (Degraded): 劣化ワイン