白い花畑の中にいるような香り、じわっと広がるミネラルの旨み。2,090円のポルトガル・ドウロの白ワインが、グラス1本の選択でさらに化ける。
マテウス & セケイラ ヴィーニョス カダン ドウロ ブランコ
Cadão Douro Branco

- 飲んだ日:2026/6/1〜2
- シチュエーション:平日、仕事を頑張った夜の晩酌
- ヴィンテージ:2024
- 生産者:Mateus & Sequeira Vinhos S.A.
- 生産地:ポルトガル>ドウロ(世界初の認定ワイン産地・ユネスコ世界遺産の渓谷地帯)
- タイプ:白(魅惑のフルーツ系)
- 品種:Gouvejo、Viosinho、Rabigato、Moscatel Galego Branco
- 度数:12.5%
- インポーター:フィラディス
- 購入店:フィラディス
- 参考価格:2,090円
- 購入価格:825円
- 購入セット:春の入口で飲みたい、ぐび飲みワインを8本。
【シチュエーション:愛用グラスが全滅した夜、眠っていた一本を引っ張り出す】
愛用のソプラノグラスが、この頃立て続けに割れてしまい、在庫がゼロになった。仕方なく引っ張り出したのが、特別な日のために取り置きしていた木村ガラスのツル・ブルゴーニュグラス(860cc)。「このポルトガル白に大ぶりのブルゴーニュグラスはオーバースペックでは」——そんな懸念を抱えながらグラスに注いだ。
結果から言うと、大正解だった。
仕事でいくつかの調査タスクをきっちりこなせた日。自分で自分をねぎらうための晩酌に、ちょうど良いポルトガル白が待っていた。
ワイン豆知識
ドウロ——世界最初の認定ワイン産地
ポルトガル・ドウロ渓谷は1756年、世界で初めて原産地呼称が制定されたワイン産地だ。現在はユネスコ世界遺産にも登録されている急峻な渓谷で、段々畑に植えられたブドウは昼夜の寒暖差が大きく、エネルギーが果実に凝縮されやすい。ポートワインで名を馳せた産地が、近年はドライワインの産地としても急速に注目を集めている。
ラビガートは「猫のしっぽ」
ブレンド品種のひとつ、Rabigato(ラビガート)はポルトガル語で「猫のしっぽ」を意味する。ドウロを代表する白ブドウ品種で、夏の極端な暑さにも適応しながら鮮度の高い酸とミネラル感を保ち、オレンジブロッサムのような甘い花の香りを持つ品種として知られる。このワインのシャープな酸と白い花の香りの一端を担っているのは、まずこの品種だろう。
Gouvejo(グヴェイオ)が南国フルーツを引き出す
もうひとつのキーとなる品種がGouvejo。ドウロの暑い気候でも酸を保ちながら、温度が上がることで桃やパイナップルのような南国フルーツの香りが発現する品種として知られる。時間経過とともにこのワインの香りがトロピカルフルーツへ変化していく表情は、Gouvejoの個性がよく出ている。
テイスティング|カダン ドウロ ブランコ 2024
- 香りの強さ:4/5
- 香りの要素:白い花(スズランのような)、オレンジピール、氷砂糖、桃、パイン
- 酸味:4/5
- 甘味:4/5
- アルコール感:4/5
- 余韻:ミネラル+白い花がシュッと消えていく。きれいな後口
- ボディ:ミディアム〜ミディアムフルボディ
- テクスチャ:スレンダーで引き締まっているが、緻密でわずかなとろみ感もある
- フレーバー:柑橘(オレンジ系)→温度上昇で桃・パインの南国フルーツへ変化。ミネラルと旨みが豊富
感想|白い花・ミネラル・グラス実験の記録
開けたての印象
グラスに注いだ瞬間から香りが主張してくる。花畑にいるような、白い花の包み込む香り。スズランに似た穏やかな甘さ、オレンジピールの明るさ、氷砂糖のような甘やかさがひと束になって鼻に届く。めっちゃいい香りだ。
口に含むと、クリーンでしっかりした酸がまず来る。そこに緻密でフレッシュな果実感が重なり、後半はじわっとミネラルと旨みが広がっていく。スレンダーで引き締まっているのに、同時に緻密でわずかなとろみ感もある——この二面性が面白い。2,000円台にしては破格のクオリティだ。
温度上昇とともに変化する香り
時間が経って温度が上がるにつれ、香りの顔がガラッと変わる。注ぎたてのオレンジ系の香りが、桃やパイナップルといった南国フルーツへとシフトしていく。温度が上がっても甘みがだれることなく、酸がしっかり引き締めて崩れない。ストラクチャーがしっかりしているから、まったりしてもまったりしきらない。バランスが整っているとはこういうことだ。
ブルゴーニュとボルドー——グラス実験の結果
1日目の後半、グラスを替えて実験した。ブルゴーニュグラス(860cc)からボルドーグラス(720cc)へ。
ブルゴーニュグラスでは、大きな口径が香りを集約し、液体が一気に横に広がることでコクとボリュームを感じさせてくれた。ポテンシャルを1.5倍に引き上げている感覚で、香りの強さは4/5。
ボルドーグラスに替えると、香りはたちまちぼやける。縦長の形状のため液面との距離が遠くなり、霧の彼方にいるような印象だ。香りの強さは2/5まで落ちる。スワリングするとある程度香り立ってくるものの、ブルゴーニュグラスの香り高さにはとても及ばない。氷砂糖のような甘やかさや、鼻をスッと通るようなニュアンスはほぼ消えてしまった。
味については、口の中でゆっくり転がすように飲めば変わらない。ただ縦長の形状に沿って液体が直線的に流れ込む飲み方だと、酸味だけが強調されて果実の緻密さや甘み、コクがあまり感じられない。数値で言うなら、ブルゴーニュグラスが1.5倍引き出しているとしたら、ボルドーグラスは0.8倍に落とすイメージだ。
もっとも、ボルドーグラスでもワインそのものは全然美味しい。ポテンシャルを引き出しきれていないだけで、不味くなったわけではない。ただ、今回のボルドーグラス(720cc)はそもそも容量が大きすぎ、形状の不一致が顕著だった。愛用のソプラノ(15oz)のようなコンパクトなグラスなら、もっとシュッとまとまった印象になるはずだ。
これだけ香りの複雑さとボリューム感があるから、大ぶりなグラスのポテンシャルに応えられる。本当に安いワインは香りが控えめで大きなグラスだとオーバースペックになってしまうが、このワインはブルゴーニュグラスに十分応えてくれた。
ペアリング
1日目:シーフードオムレツ+冷ややっこ

シーフード・ピーマン・人参・白だし入りのオムレツ。噛むたびに染み出す白だしの旨みと、ワインのミネラルが相乗効果を起こす。増幅した旨みとミネラルが立体的に重なって、うまい。最良のペアリングだ。
冷ややっこ(オリーブオイル・ポン酢・塩・ガーリックパウダー)も相性が良かった。ガーリックのパンチがワインのミネラリーなキレと合わさって、止まらない無限ループに突入する。
2日目:鶏もも肉のムニエル

バター・醤油・みりん・オリーブオイルで仕上げた鶏もも肉のムニエル。合わないわけではなく、こんがり香ばしい鶏皮とバターの旨みがワインのミネラルとなんとなく絡み合う。ただ「このワインのベストパートナーかというと……」というのが正直なところ。ミネラリーなドウロ白は、白身魚のムニエルと組んだときこそ真価を発揮するはず。次はそこで試したい。
評価
- 総合評価:3.8
- CP評価:4
評価基準
■総合評価:
- 5(Outstanding / 最高):記憶に残る素晴らしいワイン。人に勧めたくなる。
- 4(Very Good / 非常に良い):バランスが良く、また飲みたい。特別な日に適している。
- 3(Good / 良い):堅実で信頼できる。無難で、日常的に楽しめる。
- 2(Fair / 普通):飲めるが積極的には選ばない。物足りなさや違和感があることも。
- 1(Poor / 悪い):問題がある。推奨できない。同じ価格なら別を選ぶ。
■コスパ評価:
- 5(Exceptional Value / 超絶価値):価格に対して素晴らしくクオリティが高い。見つけたら即買いレベル。
- 4(Great Value / 価格以上の価値):価格以上の価値。コスパが良いと自信を持って言える。
- 3(Fair Value / 価格相応):価格相応。可もなく不可もなく。
- 2(Below Average / 価格より低い価値):価格より低い価値。もう少し安ければ納得できる。
- 1(Poor Value / 高すぎる):価格に見合わない。明らかに割高。


























