心を豊かにするワインの世界

ワインは情報量の高い飲み物。香り、味、ブドウ品種の特性、気候、文化、歴史、生産者の哲学…。どこまでも奥行きのある飲み物。だからこそ夢中になれる。心を豊かにする。ワインを理解するために、ワインを楽しむために、経験を積み重ねていく。

ブランデー概論

ブランデーはワインを蒸留してアルコール度数を高めた蒸留酒

酒税法上の定義は、「果実もしくは果実および水を原料として発酵させたアルコール含有物。
または果実酒を蒸留したもので、アルコール分は95度未満」

代表的なブランデーの分類

オー・ド・ヴィー(Eau-de-vie)はフランス語で蒸留酒を指す言葉。

オー・ド・ヴィー・ド・コニャック

コニャック地方で作られるブランデー。世界三大蒸留酒のひとつ。

単式蒸留で2回蒸留。上品な味わい。100年以上の熟成が可能な唯一のブランデー。

オー・ド・ヴィー・ド・アルマニャック

アルマニャック地方で作られるブランデー。世界三大蒸留酒のひとつ。

連続式蒸留。ワイルドでふくよかな味わい。

オー・ド・ヴィー・ド・カルヴァドス

カルヴァドス地方で作られるアップルブランデー。世界三大蒸留酒のひとつ。

リンゴのほか、一部洋ナシの使用が認められている。

オー・ド・ヴィー・ド・ヴァン(フィーヌ)

A.O.C.ワインの規定に届かなかったワイン、樽の底に澱とともに残った規格外のワインを蒸留して作るブランデー。もとのワインの風味を濃縮した味わい。

フィーヌ・ド・ブルゴーニュ、フィーヌ・ド・シャンパーニュなど、有名A.O.C.がブランデーを作っている。

ロマネ・コンティ社もヴィーヌを不定期で作っていて、入手困難で価格が高騰している。

フィーヌ・ド・ブルゴーニュ (ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ)

オー・ド・ヴィー・ド・マール

ブドウの搾りかすを蒸留して作るブランデー。ブドウ本来の芳醇な風味。

マール・ド・ブルゴーニュやマール・ド・シャンパーニュなど、有名なA.O.C.がマールを作っている。

オー・ド・ヴィー・ド・フリュイ

フルーツブランデー。ブドウとリンゴ以外の果実を発酵・蒸留して作る。

フランスではアルザス地方のフルーツブランデーが有名。ドイツやハンガリーなど世界各地で作られている。

  • オー・ド・ヴィー・ド・キルシュ:チェリー(Kirsh)ブランデー。
  • オー・ド・ヴィー・ド・プリュヌ:スモモ(Prune)のブランデー。
  • オー・ド・ヴィー・ド・ミラベル:黄プラム(Mirabelle)のブランデー。
  • オー・ド・ヴィー・ド・ケッチェ:紫プラム(Quetsche)のブランデー。
  • オー・ド・ヴィー・ド・フランボワーズ:キイチゴ(Framboise)のブランデー。
  • オー・ド・ヴィー・ド・カシス:黒スグリ(Cassis)のブランデー。
  • オー・ド・ヴィー・ド・アプリコット:アンズ(Abricot)のブランデー。
  • オー・ド・ヴィー・ド・ポワール・ウィリアムス:洋ナシ(Poire Williams)ノブランデー。

フランス以外のブランデー

  • グラッパ:イタリアのブランデー。ブドウの搾りかすを蒸留。オー・ド・ヴィー・ド・マールと同じ製法。
  • パーリンカハンガリーのフルーツブランデー。クラム、洋ナシ、アプリコットなどさまざまな果実のブランデーが作られている。
  • キルシュヴァッサー:ドイツのチェリーブランデー。Kirsch(チェリー)+wasser(水)。透明。

製造方法

フルーツをアルコール発酵させた後、蒸留して度数を高める。

蒸留には、単式蒸留と連続式蒸留の2つのいずれかの方法が用いられる。

単式蒸留とは、単式蒸留器(ポットスキル)を用いた蒸留方法。

醪を熱して3倍程度まで濃縮する。これを適切な度数になるまで繰り返す方法。

一方連続式蒸留は連続式蒸留機(コラムスキル)を用いた蒸留方法。

単式蒸留器がいくつも組み合わさった構造で、濃縮を機械的に連続して行う方法。

ブランデーの作り方が3つある:

  • 果汁を発酵して蒸留する ブドウやリンゴなど糖を豊富に含む果実を原料とする場合はこの方法を用いる。
  • 果汁を絞って糖と酵母を加えて発酵・蒸留する 糖の少ない果実を原料とする場合はこの方法を用いる。
  • 果実をスピリッツに浸漬してから蒸留する 糖が少ない果実を原料とする場合に用いる。スピリッツに原料の風味がつくまで漬け込んでから蒸留するため、新鮮な果実間あふれるブランデーになる。

等級について

コニャック、アルマニャック、カルヴァドスの等級はコントという単位で表す。

ブドウを収穫した年をコント00とする。蒸留は収穫翌年の3月31日までに行わなければならない。

収穫翌年の4月1日から、さらにその翌年の3月31日までをコント0という。

これ以降4月1日を迎えるたびにコントの数字が繰り上がっていく。

例えばコント2は、少なくとも2年以上熟成ということになる。

コニャックとカルヴァドスははコント2以上、アルマニャックはコント1以上で出荷できる。

また、ブランデーは熟成後に複数のブランデーをブレンドすることが多い。

ブレンドした中で、もっとも熟成年数の若い年数をラベルに記述できる。

コニャックについて

コニャック地方で作られるブランデー。 再訂3年熟成(コント2以上)、40度以上。

コニャックの産地

グランド・シャンパーニュ/Grande champagne

コニャック地方の中央部に位置する、最高品質のコニャックを生み出す産地。 高級ワインを生み出す土地と同じ石灰岩土壌。 繊細で力強くボリューム感があるポテンシャルの高いコニャックを生み出す。 熟成香がすばらしいことでも知られている。

プティット・シャンパーニュ/Petite champagne

グランド・シャンパーニュを南西から囲むように広がっている産地。 土壌はグランド・シャンパーニュに似ているが、香りは劣り、コニャック自体も早熟となる。

ボルドリー/Borderies

グランド・シャンパーニュの西北に広がる山地。 珪土を含む粘土質土壌。 製造過程でクパージュ(混合)される際に使用されることが多く、スミレの風味を持つことが特徴。

ファン・ボワ/Fins Bois

グランド・シャンパーニュ北部に広がるコニャック地方最大の産地。 粘土を含む石灰質な土壌。 柔らかな風味を持ち、比較的早熟。

コニャックで使用されるブドウ

  • ユニ・ブラン(サン・テミリオン・デ・シャラント)
  • フォル・ブランシュ
  • コロンバール
  • モンティル
  • セミヨン

コニャックの製造

  • 単式蒸留を2回
  • 350Lの樽で熟成

コニャックの等級

  • コント2:スリースター、VS(Very Special)
  • コント3:Superieure、Supérieur
  • コント4:VSOP(Very Superior Old Pale)、Vieux
  • コント5:Reserve Rare
  • コント6:Napoleon、Très Vieille Réserve
  • コント10:XO(Extra Old)、Hors d’âge

アルマニャックについて

アルマニャックの産地

バ・アルマニャック/Bas-Armagnac

アルマニャック地方の西武に広がる山地。 酸性で鉄分を多く踏む粘土質の土壌。 もっとも高品質なアルマニャックの産地で、ドライプルーンを思わせる繊細でフルーティーな香味。

アルマニャック・テナレーズ/Armagnac Tenareze

アルマニャックの中央に広がる山地。 粘土を含む石灰質土壌。 さわやかな酸味とスミレを思わせるフローラルな香味。 ふくよかで力強いタイプ。

オー・タルマニャック/Haut Armagnac

南部と東部に広がる山地。粘土石灰質土壌。ほぼ精算していない。

アルマニャックに使用されるブドウ品種

  • ユニ・ブラン(サン・テミリオン・デ・シャラント)
  • バコ
  • フォル・ブランシュ
  • コロンバール

アルマニャックの製造

  • 連続式蒸留1回
  • 400Lの樽で熟成

アルマニャックの等級

  • コント1:スリースター
  • コント2:VS(Very Special)
  • コント4:VSOP(Very Superior Old Pale)
  • コント5:apoleon
  • コント10:XO(Extra Old)

カルヴァドスについて

フランスのノルマンディー地方で作られるアップルブランデー。

アップルブランデーとは、リンゴを発酵したワイン(シードル)を蒸留したお酒で、フランスではオー・ド・ヴィー・ド・シードルと呼ばれている。

カルヴァドスは、A.O.C.認定されたオー・ド・ヴィー・ド・シードルで、最低40度、最低2年以上の熟成が義務付けられている。

製法は単式蒸留2回または連続式蒸留。30%洋ナシの使用が認められている。

カルヴァドスの産地

カルヴァドス・ペイ・ドージュ/Calvados Pays d'Auge

ノルマンディー地方の北東に広がる山地。 カルヴァドスのA.O.Cの中では最上品と位置付けられている。

  • カルヴァドス・ペイ・ドージュの地域で製造すること。
  • 蒸留時の洋ナシ(ポワレ=梨ワイン)の混合割合は30%以下にすること。
  • 単式蒸留で2回蒸留すること。
  • 最低2年間オーク樽で熟成させること。
  • アルコール度数最低40度。

カルヴァドス・ドンフロンテ/Calvados Domfrontais

ノルマンディー地方の中央南部に広がる山地。カルヴァドスのA.O.C.の中でももっとも面積が狭く、生産量はカルヴァドス全体の1%程度。 この産地は原料となる果樹園の25%が洋ナシの果樹園であることが特徴。

  • カルヴァドス・ドンフロンテの地域で製造すること。
  • 蒸留時の洋ナシ(ポワレ=ナシワイン)の混合割合が30%以上であること。
  • 連続式蒸留で蒸留すること。
  • 最低3年間オーク樽で熟成させること。
  • アルコール度数最低40度。

アルヴァドス/Calvados

ノルマンディー地方広域のA.O.C.で、比較的値段が手ごろ。

  • この領域全体またはカルヴァドス・ペイ・ドージュ地区、ドンフロンテ地区周辺で造られるもの、または、それらをブレンドしたもの。
  • 最低2年間オーク樽で熟成させること。
  • アルコール度数最低40度。

蒸留の規定はないが、連続式蒸留1回が多い。

カルヴァドスの等級

  • コント2:VS、Fine(フィーヌ)、Trois Etoiles(トロワ・エトワール)、Trois Pommes(トロワ・ポンム)
  • コント4:VO、VSOT、Vieille Réserve(ヴィエイユ・レゼルヴ)
  • コント6:Napoleon
  • コント10:XO、Hors d'Age(オー・ダージュ)