デザートワインは、ブドウの糖を残して甘口に仕上げたワイン。
明確な定義はない。ほのかな甘口から濃厚な甘口、度数が低いものから高いものまでさまざまなタイプがある。
デザートワインは製法によっていくつかのタイプに分類できる。
貴腐(きふ)ワイン/La Pourriture Noble(仏)
貴腐とは、ボトリティス・シネレア菌(貴腐菌)の作用によっておこる現象。 貴腐菌が付着するとブドウの果皮に小さな穴が無数にあく。 その後日照りが多く乾燥した天候が続くと、水分が蒸発、ブドウの糖度と凝縮度が上がり干しブドウ状態になる。 干しブドウ状態のブドウを圧搾し・発行することで甘口の貴腐ワインとなる。
ボトリティス・シネレアは灰色カビとも呼ばれていて、灰色病を引き起こす病害金である。 しかし、ブドウの完熟度と気候条件がそろうことで、貴腐ワインとなる。
- 貴腐菌が付着する前にブドウが完熟している
- 主要な川がある
- 朝に霧が立ち込め、昼は乾燥している
貴腐香という独特な香り・はちみつ・ドライフルーツなどの香りが特徴。
貴腐ワインは濃密な甘さが特徴のワイン。 タイミングを見極め、手作業で収穫・選果。 手間暇がかかるためデザートワインの中でも高価。
三大貴腐ワイン=ボルドーのソーテルヌ、ハンガリーのトカイワイン、ドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼ。
代表的な貴腐ワイン:ソーテルヌ(Sauternes)
- 産地:フランス>ボルドー地方>ソーテルヌ地区、バルザック地区
- 品種:セミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、ソーヴィニヨン・グリ、ミュスカ
- 格付け:
- 特別第1級(プルミエ・クリュ・シュペリュール):シャトー・ディケムただひとつ。
- 第1級(プルミエ・クリュ):11のシャトー。
- 第2級(ドゥージエム・クリュ):15のシャトー。
ほとんどが果皮の薄いセミヨンを使用。 酸味を整えるためソーヴィニヨン・ブランがブレンドされることが多い。
特別第1級のシャトー・ディケム(ワイナリー)が手掛ける貴腐ワインは、ブドウの木1本からグラス1杯しかできないという最高級ワイン。
代表的な貴腐ワイン:トカイ(Tokaji)
- 産地:ハンガリー>トカイ地方、スロバキア
- 品種:フルミント、ハールシュレヴェリュ
- カテゴリー:
- トカイ・サロモドニ:部分的に貴腐が生じている木から作られるワイン。糖分含有量120g/L以下。大樽で1年以上熟成。
- トカイ・アスー:貴腐の影響を受けていないブドウでベースワインを作る。発酵の前・途中・後に貴腐ブドウを漬け込む。高い酸味と、はちみつ・オレンジピールなどの凝縮された風味。
- トカイ・エッセンツィア:糖分含有量450g/L以上の希少ワイン。糖度が高いため発酵に数年を要する。酸味と甘みのバランスがよく、100年の熟成にも可能なワイン。
代表的な貴腐ワイン:トロッケンベーレンアウスレーゼ(Trockenbeerenauslese)
ドイツの甘口ワインは、発酵を途中で止めることで作られるため、度数が低めになる。 トロッケンベーレンアウスレーゼはドイツの最上等級のワイン。
等級 | 収穫時の最低糖度 | 最低度数 | せつめい |
---|---|---|---|
カビネット | 67~82 | 7度 | 通常の収穫時に収穫。 |
シュペートレーゼ | 76~90 | 7度 | カビネットより1週間以上収穫時期を遅らせたレイトハーベスト。 |
アウスレーゼ | 83~100 | 7度 | 完熟した房の中から上質な房だけ選定する。 |
ベーレンアウスレーゼ | 110~128 | 5.5度 | 房の中から超完熟した果実(主に貴腐葡萄)の果粒を選定する。 |
アイスヴァイン | 110~128 | 5.5度 | 樹上で氷結して凝縮したブドウを使用。自然な甘さ。 |
トロッケンベーレンアウスレーゼ | 150~154 | 5.5度 | 貴腐ブドウを使用。はちみつのように濃密。 |
アイスワイン
ブドウを収穫せずに冬まで放置しておく。冬、マインス7度以下の氷点下でブドウが凍った段階で収穫。 氷結すると糖の濃度が高まる。水分は凍るが濃度の上がった糖は凍らない。その糖を取り出して発酵させる。
凝縮した甘味がありながらもすっきりした凛とした酸が特徴的。
アイスワインの主な生産国はカナダ、ドイツ、オーストリア。 気候変動による温度上昇で、アイスワインが精算できないことも多々あるという。
ブドウの房からスプーン1杯の果汁しか取り出せないため、アイスワインの値段は効果になる。
遅摘みワイン/Late Harvest(英)/ヴァンダンジュ・タルディヴ/Vendange Tardive(仏)/シュペートレーゼ/spatlese(独)
ブドウを収穫せず、完熟するまで木になったまま置いておく。これをパスリヤージュ/Passerillage(仏)という。
パスリヤージュして腐る寸前まで収穫時期を遅らせ、水分が蒸発して糖度・凝縮度が最大限高まったところで摘み取る。
通常1kgのブドウから650~750mLのワインができるが、パスリヤージュの場合水分が蒸発して濃縮するため、250mL程度しかできない。
レイトハーベストに適した気候条件:
- 強い日照り
- 冷涼な地域
- 収穫時期に雨が降らない
ストローワイン(干しブドウワイン)
収穫後、つるしたり藁の上に並べたりして乾燥させる。 収穫したブドウを2~3か月程度陰干しして水分をとばし凝縮させることをアタッシメント/Appassimento(伊)という。
乾燥で糖度がたかまるため、1~3度程度、度数の高い濃厚で長期熟成可能なワインに仕上がる。
フランス、イタリア、スペイン、オーストラリア、チリなどの温暖な気候で作られる。
代表的なストローワイン:ヴァン・ド・パイユ(Vin de paille)
フランスのジュラ地方で作られるAOC。 農耕でレーズンやカラメルの風味。 パイユとはフランスゴで藁を表す。
AOCの規定:
- 風通しの良い場所で6週間以上陰干しする
- ブドウ品種はサヴァニャン、シャルドネ、プールサール、トゥルソー
- 収穫から3年後の11月15日まで熟成させ、そのうち18かげつは樽熟成する
- ポ(Pots)という375ml小型ボトルに詰めて出荷する
代表的なストローワイン:ペドロ・ヒメネス(PEDRO JIMENEZ)
スペインの甘口シェリー。 シェリーの中でも、ブドウ本来の糖を残したフレッシュな甘口タイプ。恋茶褐色で非常に濃密。
ペドロ・ヒメネス種のブドウを収穫後、エスパルトという敷物の上で十日程度干す。 糖度が凝縮したブドウを発酵・酒精強化しソレラシステムにて熟成する。
代表的なストローワイン:アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ(Amarone della Valpolicella)
イタリアのヴァルポリチェッラ地区で作られる赤ワイン。アマローネとはイタリアゴで苦いという意味。ビターチョコレートのような芳醇な香りと濃厚な味の辛口ワイン。
アタッシメントにて糖度を上げたブドウを、糖分がなくなるまで発酵させる。 そのため15度程度と度数が高く、ボリュームのあるワインになる。 再訂でも2年以上の熟成が義務付けられている。
発酵を途中で止めて甘口にすると、レチョート・デッラ・ヴァルポリチェッラと呼ばれる。
代表的なストローワイン:レチョート・デッラ・ヴァルポリチェッラ(Recioto della Valpolicella)
イタリアのヴァルポリチェッラ地区で作られる赤の甘口ワイン。レチョートとはイタリアゴで耳を表す。究極のデザートワインと言われている。
アタッシメントにて糖度を上げたブドウを発酵させる。 発酵を途中で止め、プルーンやレーズンの香味のとろっとした甘口のワインにする。
糖分を残さずすべて発酵すると、アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラと呼ばれる。
フォーティファイドワイン(酒精強化ワイン)
スティルワインにブランデーを加えて度数を高めたお酒。発酵途中に酒精強化すると甘口になる。
デザートワインとして愛飲されているのは、ポルトガルのポートやマデイラ、スペインの甘口シェリーのペドロ・ヒメネス(ストローワインのセクションで紹介)など。
アルコール発酵を途中で止める
糖が残っている段階でアルコール発酵を止め、甘口のワインを作る。
発酵を止める方法:
- 大量に亜硫酸を添加する。
- 酵母を濾過する。
- 発酵中のワインを冷やす。