1850年ころを境に、蒸気機関車などの交通網が発達したことで国の行き来が容易になる。
1855年、フランスのパリで万博が開催された。
→世界中からブドウの病害虫が持ち込まれる。
三大病害虫=うどん粉病、フィロキセラ、ベト病。
カビ由来の病害
うどん粉病/Powdery mildew(英)/Oidum)(仏)
- 時期:1855年(パリの博覧会と同じ年)。北アメリカ発祥。
- 症状:ブドウ粒が白い粒上の胞子で覆われ、ブドウの果皮の生育が妨げられる。果肉は成長するため、いずれ果皮が敗れ、果肉が腐敗する。
- 対処法:開花時に硫黄散布、またはベンレート(ベンミル)剤で殺菌する。
ベト病/Downy mildew(英)/Mildiou(仏)
灰色かび病/Grey mold (英)/プリチュール・グリーズ/Pourriture grise(仏)
- 症状:ボトリティス・シネレア菌が湿度の高い環境下で花、葉、果実に生じる。黒ブドウでは色素を破壊し、赤ワインの着色不良を生じる。
- 対策:風通しを良くする、イプロジオン水和剤を散布する
ボトリティス・シネレア金は、完熟した白ブドウに付着すると、干しブドウのように糖度が凝縮する。 糖度があがったブドウは貴腐ブドウといい、発酵して甘口の貴腐ワインが作られる。
晩腐病/Ripe rot(英)/Glomerella cingulate(仏)
- 症状:収穫期のブドウを腐敗・ミイラ化させる。日本の被害が大きかった。
- 対策:休眠期にベンレート(ベノミル剤)を散布する。
エスカ/ESCA(仏)
- 症状:カビの胞子が選定の際切り口から感染する。感染するとブドウの木を枯らす。樹齢10~20年のブドウ栽培に適した木が病気にかかりやすい。古代ローマ時代から記述されている古い病気。
- 対策:有効な対策がない。
エスコリオーズ/Excoriose(仏)
- 症状:雨風で運ばれて付着し、翌年に一気に増殖する。枝にかさぶたのようになる。
- 対策:かさぶたのようになった枝をひとつ残らず焼却する。
バクテリア(細菌)由来の病気
根頭癌腫病/Crown gall(英)
- 症状:土壌のバクテリアが感染し、根っこにこぶ状の塊を作る。根から栄養が遅れなくなるため、数年で枯死する。
- 対策:対策措置がない。
ピアス病/Pierce’s Disease(英)
その他の病害
フィロキセラ(Phylloxera)
- 時期:1863年、南フランスで発見。その後、ヨーロッパ各地、日本など世界中い広がる。アメリカ東海岸が原産。
- 症状:フィロキセラという1ミリ程度のアブラ虫が根っこや葉っに寄生し、樹液を吸いつくすことで念子が枯れてしまう。
- 対処法:フィロキセラに耐性のある北米のブドウの木を、これまで栽培してきたブドウの木に接ぎ木する。
フィロキセラの終息には50年の歳月を要した。 チリ、アルゼンチンなど、フィロキセラの影響を受けなかった地域もあった。
ウイルス病
- 症状:ウイルスが植物やバクテリアを介して感染。ブドウの育成や果実の糖度凝縮を妨げる。葉巻病など50種類以上の病気がある。
- 対策:ウイルスに抗体を持つブドウを育てる。クローン選抜。
生理障害
花振い/花流れ/クルール(coulure)
多くの落果が発生し、花房につく果粒が極端に少くなり、収穫量が減少する。
天候や栄養不足、不適切な栽培管理によって引き起こされる。
結実不良/Millerandage(仏)
開花後、栄養状態や天候状態が原因で、結実しないか、結実しても粒が成長しない状態。
まとめ
先人たちは次々に発生する病害に対処してきた。 新たな病害が広まる旅、ブドウ栽培は大きなダメージをうけたが、そのたびに対処法を見つけて歴史が途絶えることなく続いた。
とくに1850~1900年の50年間に大流行したフィロキセラは深刻なダメージを与えた。 チリやアルゼンチンを除く多くの国で壊滅的な被害を受けたのだから。
幸いにもフィロキセラに影響を受けない北米に授精する木を接ぎ木することでこの泣きを得た。が、ブドウ栽培の歴史は大きな転換点を迎えた。