白ブドウから白ワイン、オレンジワインが作られる。 黒ブドウから赤ワイン・ロゼワインが作られる。
白ワインの醸造方法
白ワインは白ブドウをアルコール発酵して作る。 基本的には赤ワインの醸造方法と似ている。大きな違いは次のとおり。
- 圧搾はアルコール発酵前に行う。
- アルコール発酵の温度は10~20度と低温で維持する。
- 通常、醸しを行わない。
- マロラクティック発酵は任意。
- 多くの白ワインはステンレスタンクで短期間熟成する。
収穫/ヴァンダンジュ/Vendange(仏)
熟したブドウを軸事取り入れる。 北半球は9~10月、南半球は3~4月に行う。 手つまみで収穫する場合と、機械で収穫する場合がある。
選果/エプルシャージュ/Epluchage(仏)
収穫したブドウから状態の悪い実・茎・葉っなどを取り除く。 ベルトコンベアにのせて手作業で行う場合と、自動選果システムを使って機械的に行う場合がある。
除梗/エグラパージュ/Ègrappage(仏)
ブドウの梗(軸)と果実を分ける作業。 あえて除梗しない醸造スタイルもある。
破砕/フラージュ/Foulage(仏)
ブドウの粒を果皮が敗れる程度に荒くつぶす。 除梗破砕機で一気に除梗と破砕を機械的に行う。
酸化防止と雑菌のために酸化硫黄を添加することもある。
圧搾/プレシュラージュ/Pressurage(仏)
果皮・種子を取り除いて果汁のみを残す。 ワインのタイプや生産者によって、圧搾の強さやタイミングが異なる。
主醗酵/Main Fermentation(英)
アルコール発酵のこと。果醪にを発酵槽に入れ、酵母を加えてアルコール発酵させる。 白ワインは10~20度程度に温度調整して発酵する。
通常、発酵はお酒の文脈においてアルコール発酵を指す。 しかしワインの場合は、後述のマロラクティック発酵と区別するために、主醗酵と呼び分けている。
主醗酵においてブドウの糖が不足している場合は、補糖を行うことがある。
補糖/シャプタリザシオン/Chaptalization(仏)
ブドウの糖が少ない場合、糖を添加してアルコール発酵の原料を補う手法。禁止されている国もある。
糖をはアルコールと2酸化炭素に分解されるため、補糖によってワインが甘くなるわけではない。
澱引き/スティラージュ/soutirage(仏)
アルコール発酵でできた澱を取り除く。 澱とは、ポリフェノール、酒石、酵母、タンニンなどの沈殿物のこと。
低温にすると澱が沈殿するため、上ずみを別のタンクに移し替える。
マロラクティック発行/Malo-lactic fermentation(仏)/MLF
アルコール発酵後ワインに含まれるリンゴ酸が乳酸菌の働きによって、乳酸と2酸化炭素に変化する現象のこと。
MLFは自然に起こることもあるが、醸造用乳酸菌を添加して人為的に起こすことが多い。
アロマティック品種や、フレッシュな白ワインにするときはMLFをしないことが多い。
MLFの効果:
- 酸味がやわらぎまろやかになる。
- 複雑性が増し、芳醇な香・味になる。
- 微生物学的に安定する。乳酸に変化することで、リンゴ酸を好む微生物の繁殖が抑えられるため。
熟成/エルヴァージュ/Elevage(仏)
発酵が終わったワインを、品質が安定するまで保管する。 白ワインはステンレスタンクで短期間熟成することが多い。ただし、シャルドネなど樽熟成するワインもある。
(樽熟成の場合)補酒/ウイヤージュ/Ouillage(仏)
樽熟成中にワインが木目から蒸発するので、同じワインを補って隙間をうめる。 隙間ができると酸素が入り込んで必要以上に酸化が進んでしまうため、それを防ぐために行う。 蒸発してワインの量が減ることを天使のわきまえと呼んでいる。
(樽熟成の場合)澱引き/スティラージュ/soutirage(仏)
樽熟成中に沈殿した澱を取り除く。 上澄みを別の樽に移し替える作業を繰り返すとだんだん澱が少なくなっていく。
澱とは、ポリフェノール、酒石、酵母、タンニンなどの沈殿物のこと。
清澄(せいちょう)/コラージュ/Collage(仏)
ワインの濁り成分を清澄剤を使って固めて沈殿させて取り除く。 清澄剤には卵白・ゼラチン・デントナイトなどがある。
過度なコラージュは味わいのバランスを崩すこともあるため、ノンコラージュを歌うワインもある。 ボルドーでは余った卵黄を使ったカヌレ・ド・ボルドーというお菓子が有名。
濾過/フィルトラージュ/Filtrage(仏)
フィルターにかけて浮遊物や微生物を取り除く。 香りや味わいの成分まで濾過されてしまうと考えて、濾過を行わない(ノンフィルトラージュ)な生産者もいる。
瓶詰/アンブテイヤージュ/Embouteillage(仏)
そっと便に注いで瓶詰めする。
白ワインの醸造技術
氷果凍結圧搾/クリオ・エキストラクション/Cryo-extraction
収穫したブドウを人為的にマイナス7度以下で冷凍し糖度を高める。圧搾後、果汁から氷を取り除いて発酵する。 甘口のワインを作ることが多い。
マセラシオン・ペリキュール/Maceration Pelliculaire(仏)/(別名:スキン・コンタクト/skin contact(英))
除梗・破砕後、すぐ圧搾するのではなく、しばらく果皮を果汁に漬け込んでおくこと。漬け込むことでよりブドウの特徴が果汁により色濃く表れる。
デブルバージュ/Debourbage(仏)/settling(英)
圧搾後の加重を、低温で半日ほどおいて、浮遊物を沈殿させ取り除くこと。上澄みだけ別の容器に移し替えてアルコール発酵を行う。
シュール・リー/Sur lie(仏)
フランスのロワール地方で発展した手法で、アルコール発酵で生じた澱(酵母の死骸など)を取り除かずにおいておく醸造方法。澱に含まれるアミノサンなどが溶け込みワインに複雑さやうまみを与える。澱があると酸化が防げるという効果もある。
バトナージュ/Batonnage(仏)
樽熟成中に、樽の底に澱が沈殿する。樽のふたを開けて、これを棒(バトン)でかき混ぜることで、酵母に含まれるアミノサンなどのうまみ成分がワインに溶け込む。ステンレスタンクによる熟成でも、バトナージュを行うことがある。
バトナージュを行うには、樽にワインを万反にせず、かき混ぜても溢れない程度の隙間が必要。ただし、隙間があると必要以上に酸化が進んでしまうリスクがある。そこで、近年はバトナージュを行うためのオクソライン・ラックという専用の棚が使用される。
オクソライン・ラック/Oxo Line racks
樽を回転することで澱を拡販できるようにした、樽用の専用の棚。樽のふたを開けなくてもよいため、樽にワインを万反にして必要以上の酸化を防げる。
ロゼワインの醸造方法
ロゼワインの作り方はいくつかある。
ブレンド法
赤ワインに白ワインを10%程度ブレンドして作る方法。
EUではブレンド方法は禁止されている。 ただしシャンパーニュ地方のみ認められていて、伝統的にブレンドして泡のロゼが作られている。
直接圧搾法
黒ブドウを使って、白ワインと同様の醸造方法でワインを作る。 黒ブドウを圧搾すると色素成分のアントシアニンが果汁に絞り出される。 この方法で作ると色の薄いロゼワインになる。
セニエ/Saignee(仏)
別名血抜き法。 赤ワインの醸造で、醸し中にピンク色に色づいた段階で果汁のみ分離。その後果汁を低温アルコール発酵させる。 取り出した果汁がロゼワイン、果汁を取り除いた果皮成分比率が高いほうが濃い赤ワインとなる。
混醸法/vendange mixte
赤ワインを作るときに、黒ブドウのほかに白ブドウを用いる方法。 白ブドウ比率がたかいほど淡い色のロゼワインになる。