心を豊かにするワインの世界

ワインは情報量の高い飲み物。香り、味、ブドウ品種の特性、気候、文化、歴史、生産者の哲学…。どこまでも奥行きのある飲み物。だからこそ夢中になれる。心を豊かにする。ワインを理解するために、ワインを楽しむために、経験を積み重ねていく。

ブドウの栽培と仕立て方

栽培サイクル

  • 11~3月:休眠期
  • 4~5月:芽吹きの季節
  • 6月:開花・結実
  • 7~8月:着色期
  • 9~10月:収穫期

土寄せ/ビュタージュ/Buttage(仏)

11~12月に作業。 ブドウの木を霜から守るために、木の根本に土をかぶせる。

剪定/タイユ/Taille(仏)/Pruning(英)

1~3月、芽吹く前に作業する。 枝が多すぎると果実に栄養がいきわたりにくくなるため、より良い果実を作るために不要な枝を切り詰めて形を整える。

ブドウの木の形にはいくつかパターンがあり、仕立てという。仕立て方によって、剪定の仕方や切り詰める長さが異なってくる。

長梢剪定/Cane Pruning(英)

前の年の枝のうち、主幹に近い左右の枝のみを残し、それ以外を切り取ること。

1枝に残す芽は6~9個。

短梢剪定/Spur Pruning(英)

1枝芽を2~3個残して、残りを機械的に切り取る剪定方法。

畝くずし/デビュパージュ/Debuttage(仏)

3~4月、気温が上昇してきたら行う。11~12月に土寄せして木の根元にかぶせた土をもとに戻す。

芽吹き/デブールマン/Debourrement(仏)/Budburst(英)

発芽/萌芽ともいう。春、1日の平均気温が10度を超えると芽が出てくる。

展葉/フィエゾン/Feuillaison(仏)

4月。ブドウの木が成熟し葉が増えていくこと。

葉が増えすぎると日が当たりにくくなったり、風通しが悪くなったりというデメリットもある。

開花/フロレゾン/Floraison(仏)

6月。白く小さい花が咲き、良い香りが立ち込める。花は1週間たらずで落花する。

結実/ヌエゾン/Nouaison(仏)

落花後、ブドウの果実が実ること。

夏季剪定/ロニャージュ/Rognage(仏)

ブドウの成長度合いを見ながら、追加で剪定することもある。葉を減らして日当たりや風通しを浴したり、果実の数を減らして、栄養をより少ない果実に集中するようにしたりする。

着色期/ヴェレゾン/Veraison(仏)

7~8月。ブドウの実が色づき始める。果実の成熟までは、色好き始めてから40日程度かかる。

収穫/ヴァンダンジュ/Vendange(仏)

9~10月。開花からおよそ100日で成熟し、収穫期を迎える。

仕立て方

ブドウの木が理想的な形になるように、休眠期に枝を剪定して形を整える。 仕立てとは、ブドウの木の形の名称のこと。 仕立てにはいくつか種類がある。

垣根仕立/Gyuyot,Cordon(仏)

針金と柱を用いてブドウが結果する枝を地面と垂直方向になるように仕立てる。 ボルドーブルゴーニュをはじめ、世界中で用いられているスタンダードな仕立て方。

ギヨ

長梢剪定で主幹から母枝を水平になるように針金で固定する仕立て方。母枝を1本固定するやり方をギヨ・サンプル、2本固定するやり方をギヨ・ドゥブルという。

コルドン・ロワイヤ

短梢剪定で、主幹から左右にわけた枝、等間隔に梢を固定していく仕立て方。

棒仕立て/Einzelpfahlerziehung(独)

垣根仕立てが難しい急斜面で行う仕立て方。左右に伸びた長梢を、主幹にそってたてた棒に括り付けハート形に固定する。

株仕立て/Gobelet(仏)

南フランスやポルトガルなど温暖な地域で行われる仕立て方。

針金や棒で固定せず、一般的な木の形に仕立てる。 上部に葉が生い茂るため、日差しから果実を守ることができる。

棚仕立て/pergola(仏)

日本、イタリア、エジプトなど高温多湿の地域で行われる仕立て方。

人の目線の高さに棚を作り、ブドウの枝を棚に固定する。ブドウの果実が棚により、強い日差しや湿気から守られる。

果実が人の目の高さになるため、細かい手入れがしやすい。主に生食用のブドウ栽培で用いられる。

栽培技術

  • 無農薬栽培:農薬を使用しない、または農薬の使用を減らして栽培すること。去年まで農薬を使用していたが、次の年に農薬を使用しなかった場合でも無農薬と名乗れる。つまり、残留農薬は考慮しない。無農薬という言葉は、「農薬を全く使用していない」と消費者に誤解を与える悪質でいい加減な表現のため、現在はガイドラインが改正された。改正後は、特別栽培農産物という表記になった。
  • 有機栽培(オーガニック):決められた規定にのっとって有害な農薬を使用せず、自然の力で栽培すること。1.化学肥料を使わない、2.遺伝子組み換えを使わない、3.環境の負荷を軽減すること。ただし、使用が認可された農薬もあるため、農薬がまったく使われていないということではない。
  • 接木:2つの植物を接着し新たな固体にすること。大地に根を持つ土台となる植物を台木、土台に接着する幹や枝を穂木という。植物には傷つけられた部分を回復する作用があり、それによって切断面が結合する。主に、優れた固体を栽培する、新しい品種の環境的要請を高める目的で行う。
  • マッサル・セレクション:数れたブドウ木を選び、台木に接木して育てていく方法。優れたブドウが何世代にもわたって育てられる。
  • キャノピーマネージメント:葉、枝、果実など緑の部分をキャノピーという。ブドウの生育をコントロールするため、枝を剪定したり、果実の周りの葉を取り除いて風通しをよくしたり、果実を意図的に取り除く(グリーンハーベスト)して果実の数量を調整したりする。