心を豊かにするワインの世界

ワインは情報量の高い飲み物。香り、味、ブドウ品種の特性、気候、文化、歴史、生産者の哲学…。どこまでも奥行きのある飲み物。だからこそ夢中になれる。心を豊かにする。ワインを理解するために、ワインを楽しむために、経験を積み重ねていく。

ワイン概論

ワインはブドウをアルコール発酵して作られる、世界3大醸造酒のひとつ。

ブドウは糖と水を含むため、酵母を加えるだけでアルコール発酵できる。

アルコール度数は8~14%程度。

とあるワイン作り主の言葉。「ワインは、特定の時点でブドウに集められた地域的・文化的情報の歴史的記録であり、グラスに直接届けられる。」

アルコール発酵の仕組み

ブドウ糖・果糖、水、酵母の3つがそろうと、エチルアルコールと水と2酸化炭素が得られる。これをアルコール発酵という。

ブドウは糖と水を豊富に含むため、原料にそのまま酵母を加えるだけでアルコール発酵がおこる。

このような発酵方法を単発酵という。

ブドウは豊富に酸を含み、雑菌が繁殖しにくく、アルコール発酵しやすい果実といえる。

ビールや日本酒などの他の醸造酒と比べると、醸造の仕組みはシンプル。

そのため、ワインは醸造の技術というより、醸造に用いる原料の品種や品質で差別化されることが多い。

一方ビールや日本酒は、原料の酒類や品質というより、作り主の醸造技術によって差別化されることが多い。

ワインの成分

ブドウに含まれる成分が、発酵によって変化する。

発酵前 成分量(g/L) 発酵後 成分量(g/L)
酒石酸 1.5 コハク酸 0.5~1.5
リンゴ酸 0~4.0 乳酸 0.1~3.0
クエン酸 0~0.5 酢酸 0.1~0.3

熟成中に酒石という酒石酸とカリウムなどが結合した結晶ができることがある。

貴腐ワインの場合:

  • ラクチュロン酸:ブドウのペクチン質が分解し、てできる。結晶化してガラスの破片のような見た目になる。
  • グルコン酸:ブドウにボトリティス・シネレア菌がつくことおで濃度が高まる結城さん。

ワインの風味

風味→香り+味。

香りは3つに分類される。

  • 第1アロマ:ブドウ由来の香り。
  • 第2アロマ:発酵で生成される香り。
  • 第3アロマ:熟成で生成される香り。樽香など。

果実の役割

部位 役割
果実 アルコール発酵の原料である糖と水を供給
果皮 漬け込んで色素とタンニンを抽出
蝋質 果汁の蒸発を防ぐ
タンニンや苦み成分を供給
種子 タンニンや苦み成分を供給

種と果実の間がもっとも酸味が高い。

ワインの分類

分類 特徴 具体例
スティルワイン 非発泡性のワイン。 赤ワイン、白ワイン、ロゼワインデザートワイン
スパークリングワイン 発泡性のワイン。3気圧以上のガス圧を持つワインの総称。 シャンパーニュ、クレマン、カヴァ、スクマンテ、プロセッコ
フォーティファイドワイン
酒精強化ワイン
アルコールを添加して度数を高めたワイン。
コクのある味になり、保存性が高まる。
シェリー、ポートワイン、マデイラワイン、マルサラワイン
フレーバードワイン ハーブやスパイスを漬け込んで風味付けしたワイン。 サングリア、ヴェルモット、レッチーナ

スティルワイン

非発泡性のワインの総称。

白ブドウから白ワイン・オレンジワイン、黒ブドウから赤ワイン・白ワイン・ロゼワインが作られる。

スパークリングワイン

発泡性ワインで、はいっている炭酸ガスが3気圧以上のワインの総称。

1~2.5気圧の場合は、セミスパークリングワイン(弱発泡性ワイン)という。

1気圧未満は微発泡というが、スパークリングワインとはみなされない。

フォーティファイドワイン

40度以上のアルコールを添加して、15度~22度に調整したワイン。甘口と辛口がある。

甘口はディジェスティフ(食後酒)として、辛口はアテリティフ(食前酒)として飲まれている。

世界三大フォーティファイドワインである、スペインのシェリー、ポルトガルのポートワインとマデイラワインが有名。

フレーバードワイン

ワインにハーブ・スパイス・果実を漬け込んで風味付けしたワイン。

もともとは1500年代、薬局が民間療法の薬として作っていた。

保存性が高いため世界中に船で輸送されて出回っていたという。

近代医学が発展してからは、薬としての用途ではなく、食前酒や食後酒として好んで飲まれるようになった。

フレーバードワインの代表的なワインを紹介する。

  • ヴェルモット(Vermout):白ワインに香草やスパイスを配合したワイン。
    • スイートヴェルモット:イタリア発祥。糖分を加えて甘口に仕上げている。
    • ドライヴェルモット:フランス発祥。糖分を加えずすっきりした辛口に仕上げたワイン。
  • サングリア(sangría):赤ワインにリンゴ・オレンジ・バナナなどの果実を漬け込んだワイン。スペインやポルトガルで好んで飲まれている。白ワインのサングリアをサングリア・ブランカという。
  • グリューヴァイン(Glühwein):日本ではホットワインと呼ばれている。赤ワインにシナモン・オレンジピールクローブを加えて温めた飲み物。
  • レッチーナ(Retsina):ギリシャで作られるフレーバードワイン。白ワインに松脂の風味をつける。
  • リレブラン(Lillet):フランスのフレーバードワイン。ボルドー産のセミヨン種85%、果実や果皮成分とキナの皮エキス15%を混ぜ合わせた飲み物。

デザートワイン

デザートワインは、ブドウの糖を残して甘口に仕上げたワイン。

明確な定義はない。ほのかな甘口から濃厚な甘口、度数が低いものから高いものまでさまざまなタイプがある。

フルーツワイン

ブドウ以外で作られる果実酒をフルーツワインという。

リンゴから作られる「シードル」、梅の実から作られる「梅酒」が有名。

モモ、バナナ、イチゴ、タンポポなど世界にはさまざまなフルーツワインがある。

フルーツワインの特徴:

  • アルコール度数が低い(5%程度)。
  • すっきり親しみやすい味わい。ブドウのワインのような複雑さはなく、香りや味がしたしみやすく万人受けする。

ワイン豆知識

  • ワインのPH:2.9~3.8
  • ぶどう1キロから得られるワインの量:600~800ml
  • ブドウの木1本からできるワイン:750mlボトル4~6本
  • 1本のブドウの木になる実:約15~45房
  • 1エーカー(0.4ヘクタール):1篇が63メートルの正方形くらい
  • 1エーカーに植えられるブドウの木:900~1300本くらい(2メートル間隔で敷き詰めるイメージ)
  • ワイン醸造家の年収:350~500万円

用語のまとめ

  • アルコール発酵:ブドウ糖・果糖、水、酵母の3つがそろうことで、エチルアルコールと水と2酸化炭素を得る手法。雑菌が繁殖しない清潔な環境が必要。
  • 醸造酒:果実や穀物などの原料をアルコール発酵した飲み物。
  • 単発酵:原料に直接酵母を加えてアルコール発酵する方法。
  • ブドウ由来の成分:酒石酸・リンゴ酸・クエン酸
  • 発酵後に変化した成分:コハク酸・乳酸・酢酸。
  • 第1アロマ:ブドウ由来の香り。
  • 第2アロマ:発酵で生成される香り。
  • 第3アロマ:熟成で生成される香り。
  • 白ブドウ:果皮は緑色。果実も緑色。果皮と種を取り除いて発酵すると白ワイン。果皮・種子ごと発酵するとオレンジワインになる。
  • 黒ブドウ:果皮は青紫か黒色、果実は緑色。赤ワイン、白ワイン、ロゼワインが作られる。
  • スティルワイン:非発泡性ワイン。赤ワイン・白ワイン・ロゼワインデザートワインなど。
  • スパークリングワイン:発泡性でガス3気圧以上のワインの総称。シャンパーニュスプマンテなど。
  • フォーティファイドワイン:40度以上のアルコールを添加して度数を高めたワイン。シェリー、ポート、マデイラが有名。
  • フレーバードワイン:香草・スパイス・果実を漬け込んで風味付けしたワイン。ヴェルモット、サングリア、グリューヴァイン、レッチーナなど。