心を豊かにするワインの世界

ワインは情報量の高い飲み物。香り、味、ブドウ品種の特性、気候、文化、歴史、生産者の哲学…。どこまでも奥行きのある飲み物。だからこそ夢中になれる。心を豊かにする。ワインを理解するために、ワインを楽しむために、経験を積み重ねていく。

日本酒概論

日本酒は米をアルコール発酵することで作られる世界三大醸造酒のひとつ。

並行複発酵という世界でも類を見ない緻密な醸造技術で作られる。

アルコール度数は13~18度程度。他の醸造酒と比べると度数は高め。

アルコール発酵の仕組み

ブドウ糖・果糖、水、酵母の3つがそろうと、エチルアルコールと水と2酸化炭素が得られる。これをアルコール発酵という。

日本酒は米を原料としているが、米には糖も水もない。

そこでまず米に含まれるデンプンを糖に分解する糖化という工程を行う。

次に、得られた糖に水と酵母を加えてアルコール発酵をする。

このように、糖化とアルコール発酵の2ステップで発酵する方法を複発酵という。

中でも日本酒は、糖化とアルコール発酵を同じタイミング、同じ容器内で並列に行う手法。

この方法を並行複発酵という。

世界でも類を見ない複雑で緻密な醸造方法だ。

アルコール発酵しながら糖化によって新たな糖が補給されるため、他の醸造酒に比べてアルコール度数が高くなる傾向にある。

ちなみに、醸造方法がシンプルな順に並べると、ワイん、ビール、日本酒となる。

そのため、ワインは醸造技術よりも原料であるブドウの品質で差別化されることが多い。

醸造方法が複雑な日本酒やビールは、原料にはこだわらず、作り主の醸造方法で差別化されることが多い。

醸造の手順

  1. 米を蒸して蒸米を作る。
  2. 蒸米に麹菌を振りかける。清酒用麹は売っているのでそれを購入して投入している。
  3. 蒸米に麹菌が作用すると糖分解がおきる。甘くなり糖化が起きるのである。これを米麹という。
  4. 原料が腐敗しないように、乳酸を加えて雑菌が増殖しない環境を作り出す。乳酸は乳酸菌が乳酸発酵することで生まれるが、現代は醸造用乳酸が売っているのでそれを購入して投入している。
  5. 3弾仕込みを始める。まず糖化した原料に水と酵母をくわえて酒母(しゅぼ)を作る。酵母は国が管理し ている協会系酵母を購入する。酒母はアルコール発酵がおきて酵母が培養できた状態のこと。
  6. 酒母ができたら、醪(もろみ)を作る。醪とは、蒸米・米麹・水・酒母が混ざった液体のこと。醪を作るために、3回に分けて原料をしこむことを3弾仕込みという。4日かけて行われる。
  7. 1日目、6. に蒸米と米麹と水を追加投入する。この工程を初添(はつぞえ)という。蒸米は糖化していないが、米麹や酒母に含まれる麹と作用することで糖化がおこる。
  8. 3日目、酵母が増殖したら、さらに蒸米と米麹と水を加える。この工程を中添(なかぞえ)という。
  9. 4日目、酵母が増殖したら、さらに蒸米と米麹とと水を加える。この工程を留添(とめぞえ)という。
  10. 1か月ほどアルコール発酵させる。7. から10. の工程で、糖化とアルコール発酵が並列でおきる。この状態を並行複発酵という。
  11. 布で漉して酒粕と濁り酒に分離する。漉さない状態のお酒をどぶろくという。
  12. 濁り酒を濾過して透明な生酒にする。
  13. 生酒は酵母が生きていて放置すると腐敗するので、何回かに分けて加熱殺菌して瓶詰する。

日本酒の品質表記

米の中心を心白(しんぱく)という。心白は麹と作用しやすく、糖化しやすい。

米を削って糖化しやすい心白を使用する度合いによって、吟醸大吟醸とひょうきすることができる。

  • 本醸造:3割以上削り、7割以下の原料を使った日本酒
  • 吟醸:4割以上を削り、6割以下の原料を使った日本酒
  • 大吟醸:5割以上削り、5割以下の原料を使った日本酒

一方、純米酒はアルコール発酵の方法のこと。

アルコール発酵時に醸造アルコールを添加せずに、純粋に原料のみで作られた日本酒を純米酒という。

清酒と日本酒の違い

酒税法における清酒の定義は次のようになっている。

「米、米麹、水を主な原料として発酵させてこしたもの」

そのため、日本酒は清酒に含まれる。

外国で作られた酒であっても、米が原料で漉していれば清酒に含まれる。

どぶろくは米が原料だが、漉していないため清酒には含まれない。

日本酒の定義は、「清酒の中でも、原料が日本産であり、日本国内で製造したもの」。

(豆知識)口噛み酒

奈良時代には日本酒の原点となるお酒が造られていたといわれている。

しかしその時代、麹によって糖化させる方法が確立していなかった。

当時の日本酒は、米を噛んで甘くした後、容器に吐き出して原料おため、野生の酵母による発酵を待つという原始的なものだった。

米を噛むと、唾液に含まれるアミラーゼという酵素がデンプンを糖に分解委するので甘くなるのである。

この原始的な方法で作られた酒を口噛み酒(くちかみざけ)という。

口噛み酒は選ばれた婦女が作り出す神聖な酒とされていたらしい。

でも、だれかが噛んで作ったお酒ってあんまり飲みたくないんだけど、当時の人はどう思っていたんだろう…

日本酒豆知識

  • 清酒の製造量1位は兵庫県
  • 米は磨けば磨くほど良質な酒質になる

用語のまとめ

  • 醸造酒:果実や穀物などの原料をアルコール発酵した飲み物
  • アルコール発酵:ブドウ糖・果糖、水、酵母の3つがそろうことで、エチルアルコールと水と2酸化炭素を得る手法。雑菌が繁殖しない清潔な環境が必要。
  • 複発酵:まず糖化して糖を得てからアルコール発酵させる方法。対して原料に直接酵母をくわえてアルコール発酵する方法を単発酵という。
  • 並行複発酵:複発酵の手法のひとつ。糖化とアルコール発酵を同じタイミング、同じ容器で行う。日本酒で用いられる発酵方法。対して、糖化とアルコール発酵を別のタイミング、別の容器で行う方法を単行複発酵といい、ビールの醸造に用いられる。
  • 蒸米(じょうまい):蒸した米のこと。炊いた米は粘り気があって醸造にはむかないため、蒸した固めの米が用いられる。
  • 米麹:米に麹を加えて糖化した米のこと。
  • 酒母(しゅぼ):醸造の最初に作った、米麹と水と酵母を混ぜた液体のこと。日本酒のタンク全体の10%くらい。ここに3弾仕込みで原料を追加投入していく。雑菌の繁殖を防ぐためにも少しづつ原料を加えていく手法が用いられている。
  • 即醸母(そくじょうぼ):市販の乳酸を用いて素早く作られた酒母のこと。
  • 生酛(きもと):昔のように自然に乳酸発酵がおこるのを待ってから作り出す酒母のこと。手間暇がかかるうえ雑菌のリスクにさらされるため値段が高くなる。
  • 醪(もろみ):酒母、蒸米、米麹、水が合わさった液体の古都。
  • どぶろく:醪を糖化+アルコール発酵させ出来上がった酒のこと。
  • 酒粕どぶろくを布で漉してのこった固体のこと。
  • 濁り酒:どぶろくを布で漉してできた液体の古都。
  • 生酒(なまざけ):濁り酒を濾過して澱などの沈殿物を取り除いた日本酒のこと。酵母は生きているため長くは品質を保てない。保存性を高めるためには、加熱処理をしてから瓶詰することになる。
  • 心白:米の真ん中の白濁した部分で、麹と作用しやすい(糖化しやすい)部分のこと。
  • 本醸:米を3割以上削って、7割以下の原料を使って作られた日本酒のこと。
  • 吟醸:米を4割以上削って、6割以下の原料を使って作られた日本酒の古都。
  • 大吟醸:米を5割以上削って、5割以下の原料を使って作られた日本酒の古都。
  • 純米酒醸造アルコールを転嫁せず、原料のみでアルコール発酵して作られた日本酒のこと。